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高温高圧水中(酸性、中性、アルカリ性)におけるSiCの腐食特性|セラミックス技術コラム

セラミックス技術コラム

高温高圧水中(酸性、中性、アルカリ性)におけるSiCの腐食特性

SiCはSi8N4などとともに代表的な非酸化物系構造用セラミックスであり、耐熱性、耐食性、耐摩耗性など、極めて優れた特性を有している。

例えば、平出、杉本ら 8)はSiCを含む各種の構造用セラミックスの酸性、中性、アルカリ性の高温水溶液中における腐食挙動は、SiC, Si8N4, Al2O3, BNの中では、SiCが最も優れた耐食性を示すことを明らかにしている。

しかし、焼結法で作られるSiCについては、焼結方法や焼結助剤の種類などの製造方法に関する因子が変われば耐食性も変わることが考えられる。

そこで、本研究では、焼結方法、結晶系、及び焼結助剤の異なる4種類のSiCセラミックスを用いて300℃の高温高圧水中で浸漬腐食試験を行い、製造方法と耐食性との関係を明らかにすることを目的とした。


試料として用いた製法の異なる4種類の焼結SiCセラミックスの特徴をTable1に示す。

Table 1 Characteristics of SiC specimens.

Specimens Sintering method Sintering aid Crystal structure
PLS-SiC(β) Pressureless sintering B(0.8mass%) and C β-SiC
PLS-SiC(α) Pressureless sintering B(1mass%) and C(4mass%) α-SiC
PLS-SiC(Al2O3) Pressureless sintering Al2O3(10mass%) α-SiC
RB-SiC(β) Reaction sintering B and C β-SiC



PLS-SiC(β)は微量のα-SiCを含むβ-SiCであり、焼結助剤にはBとCが用いられている。
PLS-SiC(α)は微量のβ-SiCを含むα-SiCであり、焼結助剤にはBとCが用いられている。
PLS-SiC(Al2O3)は焼結助剤にAl2O3を用いたα-SiCである。
RB-SiC(β)は反応焼結で作られたβ-SiCで微量の遊離Siを含んでいる。


試料はPTFE製の台に固定し、試験溶液を満たしたPTFE製セル内置いた。
このセルをSUS316製内容積10-3m3の静水型オートクレーブ中にセットした。

試験温度は300℃(平衡蒸気圧 8.6MPa)、試験時間は50hに一定とした。

試験溶液には、純水(蒸留-イオン交換水)、0.1kmol・m-3H2SO4(300℃でpH1.3)、および 0.1kmol・m-3LiOH(300℃でpH10.0)を使用した。

 

【β-SiCとα-SiCの違いの記事はこちらから→

 

Table 2は、300℃の純水、0.1kmol・m-3H2SO4(300℃でpH1.3)、および0.1kmol・m-3LiOH(300℃でpH10.0)中で50h浸漬腐食試験をした後に測定された各試料の質量変化を示す。


Table 2(unit g・m-2)
Specimens Pure water 0.1kmol・m-3-H2SO4 0.1kmol・m-3-LiOH
PLS-SiC(β) -0.4 +1.2 +1.9
PLS-SiC(α) -24.0 -17.4 -10.0
PLS-SiC(Al2O3) -53.4 +10.1 -167
RB-SiC(β) -4.4 -0.4 +8.3

中性、酸性、アルカリ性のいずれの高温水環境中においても優れた耐食性を示すのは、PLS-SiC(β)であり、以下、耐食性はRB-SiC(β)、PLS-(Al2O3)の順に悪くなることがわかる。

すなわち、優れた耐食性を持つSiCセラミックスを得るには、焼結方法としては反応焼結よりも常圧焼結を、SiC原料粉としては、α-SiCよりもβ-SiCを、焼結助剤としてはAl2O3よりもB,Cを用いる必要がある。

 

参考文献;

高温高圧水中におけるSiCの腐食特性

田中大輔, 相馬才晃, 杉本克久

 

8) 平出信彦、杉本克久:防食技術, 37, 415(1981).

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