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HwangとGermanによる焼結のコンピューターシミュレーション|セラミックス技術コラム

セラミックス技術コラム

HwangとGermanによる焼結のコンピューターシミュレーション

HwangとGermanは、球形粉末粒子の焼結初期過程について、コンピューターシミュレーションを行った。
この段階では、粒子間の鋭いネックは、表面張力の影響により鈍化して、粒子配列体は収縮を開始する。
しかし、ネック同士が衝突するほど十分にはネック成長は進んでいない。
彼らは焼結機構を二つのカゴテリーに分類している。第一番目あるいは凝着カゴテリーは、物質は粒子表面からネック領域へ輸送されるというものである。
粒子接触域からは、物質は流出しないと考えるため、焼結収縮もない。
第二番目のあるいは緻密化カゴテリーは、ネック粒界が空格子の消滅個所となり物質は接触域からネック表面へと流出するというものである。

凝着カゴテリーには次の三つの物質輸送機構がある。
(1)ネック近傍の曲率の大きな部分からの蒸発と、より曲率の小さな部分への凝縮による物質輸送。
(2)同上の領域および始点、終点における表面拡散。
(3)同上の領域および始点、終点における体積拡散。

物質輸送プロセスとしての緻密化は、Nabarro、HerringおよびCobleらの研究が基礎になっている。
彼らは、多結晶物質は、高温においては小さな外力により変形するという、いわゆるマイクロクリープを仮定している。
焼結においては、マイクロクリープは、表面張力の作用により、緻密化を引き起こす。緻密化のカゴテリーには二つの機構が入る。

(1)粒子間粒界からのネックへの体積拡散による物質の流動。
(2)同上の領域および始点、終点における粒界拡散による物質の流動。

上記五つの機構の模式図をFig.1に示す。


蒸発-凝縮は拡散輸送機構ではない。
しかしながら、HwangとGermanは、大抵の金属に対しては、融点近傍における蒸気圧は小さいので、蒸発-凝縮機構の寄与は大したことはないとしている。
それゆえに、HwangとGermanの解析は、拡散流動による焼結に対するものと考えることができる。

任意の焼結実験において、どの機構が支配的であるかと決定するための伝統的な方法は、ネックについて曲率半径、表面積および体積を幾何学的に近似することから始まる。
それらの近似に基づいて、次のような形の式が導出されている。

 x^n/a^m =Kt

ここで、xとaはそれぞれネック半径および球粒子半径である。
tは時間で、Kは原子容と表面エネルギーを含む温度依存定数である。
異なる機構に対して、それぞれ異なる指数nおよびmが得られる。
どの機構が支配的かを知るために、実測値がどの組合せの指数値をもつ式と一番良く合致するかということを決定する。

HwangとGermanは、このような方法は次の二つの理由により機構の決定には不十分であることを示した。
(1)一般に、任意の焼結実験についてみると、一つ以上の機構が寄与しているのが普通である。
(2)実際のネックにおける半径、表面積および体積とそれらの近似値との差は、焼結の進行に伴って、すなわちx/a値が増加するほど大きくなる。
二球体モデルに対する幾何学的変化を計算するために、HwangとGermanは新たに凝着と緻密化の両機構が同時に働くことを考慮に入れている。
これは微小時間ステップを用いて幾何学形状を逐次変化させていくことによりシミュレートされている。
各時間ステップに対する凝着と緻密化機構のそれぞれのネック成長速度が計算される。
この計算に基づいて新しい幾何形状が決定され、次の時間ステップにおける変化を計算するのに使用される。
Hwangはそれまでの研究から、五つの機構について流束式を選んでいる。
表面拡散機構および球粒子自由表面からの体積拡散に対してはKuczynskiの式を少し修正したものを用いている。
蒸発-凝縮機構についてはKingeryとBergの式をまた、粒界からの体積拡散および粒界拡散式はJohnsonの式を用いている。

以上のような考え方に立って、球体モデルに対して作成された焼結速度解析のコンピュータープログラムは、それまで用いられてきた多くの幾何学的近似を必要としない。
これまでの焼結モデルにおける近似の一つである球粒子半径は一定であるとする仮定は不要となった。
一方、HwangとGermanも、球粒子間のネックの輪郭は円形であるという不正確な仮定を用いている。
より現実的な形状に基づいた計算をしようとするならば、コンピュータープログラムがぼう大になり扱いにくくなってしまう。
いずれにしても、HwangとGermanの新しい方法によれば、等温焼結過程における幾何学的変化だけではなく、加熱昇温中における変化も計算することができる。
焼結実験においては等温条件を達成する前に必ず昇温過程があるから、彼らの方法はその点有利である。


宗宮 重行・守吉 佑介 共編 「焼結-ケーススタディ」

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