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球粒子-平板模型における転位密度についてのSchattの研究|セラミックス技術コラム

セラミックス技術コラム

球粒子-平板模型における転位密度についてのSchattの研究

球粒子-平板模型には、表面方位が{111}で厚さ5 mmの単結晶銅板を用いている。
この銅板の上に直径0.5 mmの単結晶銅球を配列する。
位置ぎめは、雲母でつくったテンプレートを用いている。
この試料を乾燥水素中、10 ℃ / 秒で900-1000 ℃まで昇温加熱した。
焼結後転位密度と配列を観測した。
その観測試料を作製するために、球粒子を焼結した銅板を、電鋳法により銅マトリックスに埋め込んだ。
電鋳銅層と球粒子を電気化学的に取り除き、銅板表面を電解除去した。
Fig 7に方法を模式的に示した。
Fig 8は、1000 ℃、8時間焼結した球粒子と平板の接触面を示したものであり、焼結中に形成された転位エッチピットのロセットを見ることができる。
焼結時間とともに、すなわちx / α 比(x:ネック半径、 α:球粒子半径)が増大するとともに、x/ α 比が0.15付近までロセットの直径は急激に増加する。
このときロセットの直径は、ほぼ5 であり、転位領域の深さは約1.5である。
ロセット内部では転位密度は大きいのでエッチピットが重複してしまい顕微鏡下では転位密度を測定することができない。
このため、接触部における転位密度の定量的評価は修正コッセル法によりなされたわけである。





この方法により、転位密度N (cm-2)、すなわち単位体積1 cm3当たりの転位線の長さ(cm)を測定することができる。
測定は10~15 μm間隔に小体積領域についてなされた。
よく焼鈍した単結晶、すなわちSchattの実験における球粒子と平板の焼結前の転位密度は1~5×106 cm-2のオーダーである。
焼結中に転位密度がいかに増加するかはFig.9の転位分布の変化にみることができる。
焼結温度1000 ℃、焼結時間7分~96 時間について示されている。
これらの分布図では球粒子と平板間の接触面における転位密度の対数が距離 の関数としてプロットされている。
x=0は最初の接触点を表す。
主分布の他に、96時間焼結したものについて接触面下20および40 μmの面おける転位分布も示してある。
転位存在領域は深さ方向よりも面に平行な方向により急速に拡大する。



転位分布をみると、短時間焼結では最初の接触部における転位密度は1000 倍以上に増加している。
7分後には5×109 cm2の転位密度を有しているが、15分後には5×109 と1010 cm2の間の値に上昇している。
長時間焼結では、分布の最高値はもはや最初の接触点にはなく、最初の接触点から距離 離れた点、すなわちネック表面位置に移動している。
96 時間焼結後においても、この位置における転位密度は109 cm -2のオーダーにとどまっている。
ネック中央部では長時間焼結後には転位密度は著しく減少している。
Schattはこの減少を回復プロセスに帰している。
転位密度は再結晶を起こすほどには大きくない。

転位の増殖は球粒子と平板間のネックにおける表面応力に起因する。
ネック成長に伴い表面応力は減少するが、転位密度は高い値を保つことは注目に値する。
表面応力は表面張力とネック半径との比γ / ρと見積られる。
Schattの球粒子-平板モデルで、球粒子半径0.025 cm、焼結時間15分の場合、 x/ 比は0.07となり、これらの値から応力は近似的に3 MPaである。
一方、16 時間焼結では x/ は0.15で、応力は近似的に0.7 MPaとなる。

Schattは圧粉体を焼結したときの転位密度の変化についても研究している。
この場合にはX線回折線の広がりにより転位密度を決定するコッセル法は適用できない。
陽電子消滅分光法を代わりに用いている。
圧粉したままの転位密度は圧粉時の冷間加工のため極めて大きく1011 cm –2のオーダーである。
圧粉体が加熱昇温している間に転位密度は再結晶のため最小値をとる。
昇温の後期および等温焼結段階では、転位密度は、球粒子-平板模型について述べたようなプロセスにより再び増加する。
最終的には回復が起こり転位密度は減少する。


焼結-ケーススタディ 宗宮 重行・守吉 祐介 共編

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