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塑性流動と拡散流動による焼結の考察|セラミックス技術コラム

セラミックス技術コラム

塑性流動と拡散流動による焼結の考察

考察
 これまでの三つの節で、焼結に関する実験研究を紹介した。それらの実験に基づいて、拡散流動と塑性流動という二つのタイプの物質輸送の、金属粉末粒子の焼結に対する相対的寄与を決定することができるはずである。しかし著者の考えでは、現在のところそのような決定は難しい。この考察の節では、下記の項目について検討する。
 (1)塑性流動による焼結。
 (2)拡散流動による焼結。
 (3)上記両タイプが同時にあるいは順々に寄与する焼結。
最後に表面応力により転位が増殖することを支持する説と否定する説に対する理論的研究を紹介する。

 

塑性流動による焼結
 塑性流動による焼結に対する主要な考察は、転位による活性化焼結に関するSchattの研究でなされている。球粒子-平板模型実験結果に基づいてSchattは焼結過程で転位密度がどのように変化するのか、また転位密度のピーク位置がどのように球粒子-平板接触点からネック領域に向って移動するかについて定量的データを提示した。転位の増殖に対する応力の効果に関しては、彼らの実験データそのものは極めて間接的なものである。球粒子-平板模型を15分間焼結した場合、Schattの測定によれば転位密度は5×10 cm-2近傍の値である。また、16時間焼結したもののネック表面領域にほぼ同じ転位密度が観察されている。この転位密度がほぼ一定であるという事実は、ネックの表面応力が上記焼結時間経過の間に約5分の1に減少するにもかかわらず見出されたものである。Schattはこの転位は表面応力によってFrank-Read源から増殖されるとしている。この点については本節の最後に述べる。

拡散流動による焼結
 球形粒子配列体の焼結初期に観察される幾何学的な変化は、多少の差はあれ拡散流動機構のいくつかを組み合せることにより定量的に説明することができる。それらの機構のみをとりあげて物質輸送を論ずることもできるし、それはそれ自体立派な考察であることはもちろんである。しかしこの論文は焼結における塑性変形の果たす役割を論ずるものであるから、拡散流動機構としては一つの取り扱いのみを紹介した。体積拡散、表面拡散および粒界拡散の相対的寄与についての検討は他の論文に譲りたい。
 なお、1949年のHerringの論文にはじまり、続いてHirthおよびEasteringとTholenの論文で、表面応力によっては、転位は増殖されない理由が理論的に考察されている。それらについては最終節で検討する。

 

焼結-ケーススタディ 宗宮 重行・守吉 祐介 共編

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