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セラミックスの誘電現象(その2 分極の種類)|セラミックス技術コラム

セラミックス技術コラム

セラミックスの誘電現象(その2 分極の種類)

均質な誘電体が分極する機構は、電場の下で電子雲が原子核に対して、相対的に変形することに起因する電子分極(electric polarization)、イオン性結晶の場合、正イオン格子と負イオン格子が相対的に変異することに基づくイオン分極(ionic polarization)の三種類がある。

不均衡な誘電体では、これらと全く異なる機構の空間電荷分極(space charge polarization)、あるいは界面分極(interfacial polarization)がある。

この分極は誘電体中をイオンなどの荷電粒子がある距離だけ移動したのち、その不均質のために特定の空間や界面にたまると空間電荷、または界面電荷が生じることに基づくものである。

 

(a)電子分極

これらのうち、電子分極では、原子はZe(Z:原子番号)の正電荷を持つ原子核とこれを中心にして半径rの球面内に一様に分布しているマイナスZeの負電荷の電子雲からなると仮定する。印加された電界Eiにより誘導される電子分極は、電界が原子核と電子雲との相対位置を変えようとする力ZeEiと、この変位を妨げようとする正・負電荷間のクーロン力との間の釣合の関係から求まる。

 

(b)イオン分極

異種の原子からなる分子では電子雲の偏りにより正負イオンとなる。このイオンに外部電荷が加えられると平衡位置からずれ、正負イオンの相対的位置の変位に基づくクーロン力と電界による力がつりあい、平衡が保たれる。
これをイオン分極という。
これはまた、原子分極ともいわれている。

イオン分極率αiは電子分極率と同様、通常の温度では温度依存性が小さい。

NaClなどのイオン結晶の場合、全分極は電子分極Peとイオン分極Piの和で与えられる。
光の周波数ではイオンの慣性のためイオン分極は追随できない。
低周波数と高周波の比誘電率をそれぞれεr0とεr∞(εr∞=n^2、nは屈折率)とすると

ε0(εr0-1)Ei=Pe+Pi(低周波領域)
ε0(n^2-1)Ei=Pe(高周波領域)

となる。

 

(c)配向分極

電界がなければ誘電体中の永久双極子モーメントは熱運動により無秩序な方向分布をしており、単位体積中のそのモーメントの総和は0、すなわち分極は0である。
電界が印加されると双極子は電界の方向に配向し、分極が発生する。分極の大きさは電界の大きさによる双極子の秩序化と熱運動による無秩序化との平衡で決まる。

 

(d)空間電荷分極

不均質な誘電体の場合上記三つの分極とは異なる機構の分極が起こる。
この種の分極は結晶の微視的な構造だけでなく、結晶粒の大きさや分布および粒界の性質などの巨視的構造にも関係し、現象論的にはマックスウェルやワグナーらによる理論的取扱いもある。



誘電体セラミックス原理と設計法  安達正利

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